2025年04月30日
MicroMonsterProインプレ 中華ベイト 夢の共演ブレーキ

前回までのログで自作トップチニング専用ロッドを作ったわけですが、ロッド重量が66gと軽量のため、この軽さを最大限活かすにはリール本体も軽くする必要があります。
手元にあるチニングに使えそうなリールは
・17スティーズA
・月下美人AIR(借り物)
・Giu99(中華ベイトAURORA AIR亜種で99gの超軽量リール)
全てのリールを自作ロッドで使ってみたところ、どれも一長一短あり、「コレだ!」と一点の曇りなくしっくりくるのがない。
この中では月下美人AIRが重量も大きさも使い勝手も程良く、アルファスAIRか、アルファスBFを買うって選択肢もありかなぁ…という感じ(
スティーズCTは高いのでなしで)。
それでもGiu99のような圧倒的な軽さによる快適性はなく、うーーーむ…と悩んでいたところ、中華ベイトで面白いものを見つけたので飛びついてみました。

キングダム Micro Monster Pro(Aliexpressリンク)
リンク切れしてたら検索してみてください。
主な売りは
ダイワマグフォースのような可変インダクトローター搭載の32mmスプール
シマノFTBのような可変マグネットブレーキ
メインフレームはアルミ、フタはカーボン(強化樹脂?)で剛性を確保しつつ138gと超軽量
ダイワSV、シマノFTBを組み合わせた夢の共演リールです(ノ∀`)タハー
個人的に惹かれたのは重量、32mmスプール、ダイワマグフォースのような可変インダクトローターによるブレーキシステム。
トップチニングだと5~12gくらいのルアーがメインとなるため、スペック的には32mmスプールがドンピシャ。
値段も安いしリアクションバイトです。

まずはスプールから。
32mmスプールで6gくらいとかなり軽量。
ダイワのマグフォース(SV)のようなというか丸パクリと言って過言ではない、可変インダクトローター搭載のスプールです。
ただダイワのインダクトローターよりはだいぶ小型で、バネの強さもSVとマグZの中間くらいで、32mmスプールにしては強め(硬め)です。
日本のベイトリールだと32mmスプールはちょいフィネス寄りで、8~12gくらいがターゲットで気持ちよく投げられる。みたいなセッティングがダイワシマノ両社の考えだと思います。
そのためトップチニング専用としては、32mmスプールが直球ど真ん中みたいな感じです(24スティーズSVとか)。
私もコレを想定して買ったわけですが、インダクトローターの小ささ&バネの強さから、これはブレーキがかなり弱そう…。
このリールがターゲットにしているルアー重量は15g以上かも…というのが第一印象です。
ちなみに手元にあるリールのインダクトローターの外径は
MicroMonsterPro 15.55mm(32mmスプール)
16ジリオンSV 18.1mm(34mmスプール)
17スティーズA マグZ 18.5mm(34mmスプール)
月下美人AIR 18.05mm(28mmスプール)
MicroMonsterProが圧倒的に小さいことがわかります。

マグネットブレーキ側はシマノ FTBのような構造で、スプールが回転することにより発生する渦電流にマグネットが引っ張られる形でスプールに近づくので、マグネットブレーキ力が増します。この可動式のマグネットが電磁誘導の非接触可変ブレーキとなります(こんな説明で間違っていないと思います。たぶん…)。
キャスト直後のスプール高回転時は最大限にブレーキがかかり、キャスト後半のスプール低回転時はマグネットが定位置に戻るためブレーキ力が最小限になります。
画像では片側のみを動かしていますが、反対側も動くので2列の可変マグネットブレーキです。
可動領域はほんのちょっとに見えますが、たったこれだけで可変ブレーキ力がかなり変わります。

つまりこのMicro Monster Proはダイワ マグフォース(SV)みたいな可変インダクトローターと、シマノ FTBみたいな可変マグネットのダブル可変ブレーキとなります。
で、実際に使用するとですね…。
まずキャスト直後のバックラッシュは概ね問題なし。
ただキャスト後半に差し掛かるあたりで、急激にブレーキ力が下がるので、ラインが浮いてバックラッシュすることがかなりあります。
フタ側のダイヤル20段階をMAXにしても、6g以下の軽量ルアーは少しの向かい風でもフルキャストするのが難しい。
第一印象通り、このリールがターゲットとしているルアー重量はスペックから想定されるよりだいぶ重めのようで、12g以上がブレーキダイヤル調整で良い感じになります。

ブレーキの感覚としては、私の中ではSVブーストに近いです。
SVブーストは1段目のバネ強すぎて何考えて作ったんだ?って思ってるブレーキシステムなんですが、後半の伸び良さに対してのバックラッシュのしやすさがすっごいSVブースト感…。
振り切るのではなく、フワッと軽く投げるだけで飛びますよ。って設計に思えます。
考えればわかるんですが、可変ブレーキ2つ積むということは、最初だけ両可変ブレーキがMAXで効いて、両可変ブレーキ部が戻る後半は一気にブレーキが抜けます。
そのため後半の伸びは良いんですが、ブレーキが根本的に弱いのもあり(インダクトローターが小さいとかで)、軽量ルアーを投げるのに向いていない。
軽いルアーは少しの向かい風でも、ちょっとポップするだけでバックラッシュします。
せめてどっちかの可変ブレーキが粘ってくれないときつい。


ココからは内部構造について。
まずはドラグ関連。
スタードラグはGiu99みたいなスタードラグ内部にクリック音が内蔵されているタイプです。
スタードラグ位置をバネで保持しているのはスティーズと同様の構造。
ココで特出すべきは、ドラグにテンションを掛けるウェーブワッシャーにコイルウェーブスプリングが使用されている点。
コイルウェーブスプリングはステラのドラグノブに使われていますが、ベイトリールのドラグに使われているのは初めて見ました。

メカニカルブレーキはクリック音付き。
取り付ける際にメカニカルブレーキ内にある突起を本体側の溝に合わせて入れないと締め込めず、結構めんどい。
クリック音付きメカニカルブレーキは、クリック単位ごとの調整になりがちなので、ごく僅かな調整が効きづらい。
クリック音なしでの無段階が個人的に好みです。

ボディのネジ止めは最近のダイワベイトリールみたいな、内側(スプール側)からのネジ止め。
デザイン的には内側からのがネジが見えずカッコいいのはわかるんですが…メンテは絶対外側からのが楽です。
そもそもこのMicroMonsterProはメインボディアルミ、フタがカーボン(強化樹脂?)なので、ネジを切るのは普通の設計者ならアルミのメインボディ側です。
それをなぜ樹脂のフタ側にネジ切った?って設計者を小一時間問い詰めたい。
樹脂側にネジを切っているので、正確にはネジではなくビスです。
そのため開け閉めを繰り返すと、ネジ穴がバカになって締め付けトルクが下がります。
これを少しでも回避したいからか、クラッチOFFにすると現れるネジを含んだ4点止めで、おまけにこのクラッチOFF時のネジだけプラスネジ。
トルクスかプラスネジかで統一してよー。ドライバー切り替えるのめんどいよー。

ワンウェイクラッチには落脱防止ネジを入れてて、普通はコストや重量考えて入れないと思うので小さなこだわりを感じます。

ドラグクリッカーは安定感と音が大きい、ダイワのスピニングドラグ音と同じクリックリーフ式。
ちなみにどうも私が買ったのは加工ミスがあるっぽく、ハンドル軸に肉抜きの穴加工がされていません。
他の方の分解写真を見ると肉抜き加工されているので、ハズレ品かよっ!

ベアリングは主要部分には全て入っています。
入っていないのは、レベルワインダーのウォームシャフトギア両端の2個、ハンドルノブ2個x2です。
錆やすさを考えると、ここはベアリングを入れずにカラーというのはアリです。

ハンドルはカーボンで、表面外周は面取りされているので、ちょっとだけ加工コストが高いタイプです。
ハンドルノブは上記の通りベアリングではなくカラーですが、カラーにしてはガタがなく、回転がスムーズ。
精度が出ているので、ベアリング入れる必要性を感じません。
またTPUのハンドルノブは滑りづらく持ちやすくて好きな形状です。

ライン放出口は普通のメガホン型ではなく、極小TWSみたいな形状をしています。
中華リールでいくつか搭載されているのがありますが、少しでも放出口の角度を稼ごうというのが見て取れます。
シマノにも見習って欲しい。

軽くて巻き心地も良く、値段の割にかなりがんばっているリールであることには間違いないんですが…。
私はトップチニング用リールとして使いたいので、弱めのブレーキが正直厳しい。
ライン巻き量をちょっと抑えたり、このリールの特性を理解して慣れたら、だいぶ振り切れるようになったんですが、出来ればもうちょっとブレーキを強くしたい。
強い向かい風だと軽量ルアーは正直使い物になりません。

考えられる方法は2つ。
1つ目はインダクトローターのバネを弱くして、インダクトローターを少しでも長く外に出し続けブレーキを粘らせる。
写真左はダイワSVのバネ、右がMicroMonsterProのバネ。
線径はどちらも0.2mmですが、MicroMonsterProの方が外径が小さく、コイル数が少なく、長さがちょっと長い。
MicroMonsterProのバネの方が強いので、こいつを自作してSVくらい弱くすればいいのでは!?

2つ目はフタ側のマグネットブレーキ部を何とかする。
マグネット保持部を自作して、マグネットをより近づけたり、マグネット数を8->10にしたりの加工も考えられます。


とりあえずマグネットブレーキ部でなんとかしてみようと思います。
2列ある可変FTBをMAXブレーキ状態で固定すれば強くなるのでは?と、可動範囲抑制部に1mmのアルミ棒を入れてロックして、上からマスキングテープを貼って抜け防止加工をしてみました。
FTBブレーキを2列ともMAX固定すると、さすがにブレーキが強すぎるようで、指でスプールを回転させても「これはブレーキ強いぞ」となりました。
さらにどうも片方の精度が怪しいっぽく、MAX状態だとインダクトローターと接触しているのか、擦れた音がします。
なので擦れ音がしない1列だけをMAXで固定し、もう1列は通常の可変状態で運用してみることに。

これがかなり良い感じのブレーキ力で、トップチニングで使う5~11gくらいのルアーは相当良くなりました。
ブレーキダイヤルMAX付近固定から、中間前後のダイヤルまで落とせるようになったため、向かい風でもブレーキダイヤル調整で安定感が出ます。
飛行姿勢が良いルアー(ブリーカートッピーとか)は、ダイヤルブレーキをかなり下げられてすっげー飛びます。
コレだよ!求めていたトップチニング専用ベイトリール!
なおPE1.2号くらいでも3g弱のハゼクラルアーを投げることが出来ました。
ブレーキをかなり強めにする必要があり、Giu99の快適性には遠く及びませんが、スティーズAで投げるより桁違いで釣りが成立するレベルです。

総評
Micro Monster Proはちょっとだけアレコレする必要はありますが、トップだけではなく、チニング全般に使える中華ベイトリールです。
重量が軽いのもあり、まさにチニング専用と言っても過言ではないレベル。
またセール&クーポンがあるときに買えば6000円弱で買えることもあるので、破格のコスパと言えます。
実は遊び感覚込みで買ってみたんですが、調整したらココまで使えると、正直高いリールいらんのでは?という気持ちがちょろちょろと…。
ここ2~3年くらい、中華ベイトリールは新しいコンセプトのが出まくっており、ダイワシマノに拘らないなら中華ベイトリールで良いのでは?というジャンルがどんどん出ています。
特に超フィネス系は、ダイワシマノが「バスで使うフィネス」の考えから脱却しない限り、正直中華ベイトリールの方が圧倒的に使いやすいです。
ダイワシマノもっとがんばってよ!
小物釣りにそんな剛性と重量いらないよ!