2023年06月27日
ダイワSVブースト徹底解説


ダイワのベイトリールに搭載されているSVブレーキシステム。→ダイワ公式SVブーストシステム
一言で説明すると、渦電流を使った電磁誘導のブレーキシステム。
構造は非接触でブレーキ抵抗を掛ける。
CG画像は写真のスプールとボディブレーキダイヤル側がくっついた状態の断面図。
スプールにバネでスライドするインダクトローターが組み込まれており、リールブレーキダイヤル側に配置された2つの円柱ネオジム磁石の中に入って回転すると、磁界の力でインダクトローターに抵抗がかかり、スプールの回転を抑制するというもの。
このバネを使ったスライドするインダクトローターというところが最大のギミックで、ブレーキの掛かり具合のインダクトロータースライド幅はバネの強さと遠心力で決まる。
キャスト直後は強い遠心力がかかるので、インダクトローターのスライド幅が最大となり、強くブレーキが掛かる。
インダクトローターはバネの力で元の位置(ブレーキ抵抗が最低の位置)に戻ろうとするため、磁界の影響が少しずつ減る事でブレーキ抵抗も下がる。
これを「良い感じ」で組み込んだのがダイワのSVブレーキシステム。
なお今回計測したスプールは以下のスプール。
SV
RCS 1012SV G1
SVブースト
RCS SV BOOST PE 1000 G1
(シルバーウルフのSVブーストスプール)
MAG-Z
STEEZ 1016 G1
(スティーズAのMAG-Zスプール)
MAG-Zブースト
RCS MAG-Z BOOST 1000G1
いずれもφ34mmスプールとなる。

もっと噛み砕いて説明する。
キャスト中インダクトローターがどれだけ磁界に入っているかがブレーキの掛かり具合となる。
キャスト直後はブレーキ設定値のMAXとなり、飛行中徐々にブレーキが落ちていくと考えて問題ない。


このSVが2020年にSVブーストとなってバージョンアップされた。
SVではインダクトローターのスライドに使うバネが1つだったのに対し、SVブーストでは硬さが違うバネが2つ組み込まれている。
強い方のバネはキャスト直後の初期バックラッシュを防ぎ、弱い方のバネは飛行中に弱くブレーキを掛ける。
私は当初、SVブーストはSVの初期バックラッシュを防ぎやすくしたブレーキシステムだと考えていた。
だが解析していくと、そんな単純な話ではないということがわかってきた。
まずSV、SVブーストのインダクトローターがどれくらいの回転数でスライドするのか確認しようと考えた。インダクトローターがどれくらいの回転数で飛び出るのかを数値で調べようとするも自作マウンタと小型チャックの軸がブレブレで話にならんw pic.twitter.com/c9AVh46CAz
— さ (@DIY_seabass_SA) June 4, 2023
スプールをスピンドルモーターで回転させるためのマウンターを製作したのだが、24000回転/minほど回すもインダクトローターはピクリともスライドせず。
CNCのスピンドルモーターに咥えてみるも、やはりピクリともスライドせず。SVブーストでもピクりともしてない
— さ (@DIY_seabass_SA) June 4, 2023
私の計測方法が根本的に間違ってるのか? pic.twitter.com/acPquxE9Ax
ここで遠心力だけでインダクトローターが動くのではなく、マグネットの磁界に入ることによる渦電流によってインダクトローターに抵抗がかかり、あたかもインダクトローターだけ弱い力で摘んでいる状態が出来る事でスライドするというのを理解する。
理論的な考えがすっぽ抜けていた。
さすがにリールと同様の磁界を製作するのは難しいため、SV、SVブースト、マグZ、マグZブーストの各スプールがどれくらいの力(重量)がかかると、インダクトローターがスライドするのかを確認する事にした。

インダクトローターのみに重さが掛かるマウンターを製作し、オモリを乗せ、各バネがどれくらいの重量でスライドするかを確かめた。
Eリングを外し、バネ単体の線径と外径から正確な数値を測る方が良いのだが、Eリングが外しづらい事、SVブースト、マグZブーストスプールは借り物のため、万が一の事態は避けたかったのでこの計測方法にした。
各スプールのインダクトローターがスライドする重量は以下の通り。
始 | 終 | B始 | B終 | |
SV | 9.85g | 12.2g | ||
SVブースト | 11.47g | 12.3g | 201.35g | 241g |
マグZ | 36.71g | 119g | ||
マグZブースト | 50g | 68.56g | 132.6g | 174.7g |
SV、SVブーストの弱いバネは測りづらく正確ではない。
またブーストの強いバネは細かい重量が設定しづらいので±3gほどの誤差がある。
大体の目安として見て欲しい。
計測してわかったのは、SVブーストの強いバネは硬すぎと言っても過言ではなく、初期バックラッシュを防ぐだけのバネに思える。
重量級ルアー用のマグZブーストの強いバネよりも硬いとは思わなかった。
なおSVとSVブーストの弱いバネは感覚的にかなり弱く、インダクトローター下部のスライドガイドに引っかかると戻らない事もある。

上記の結果、どれだけの力が掛かるとインダクトローターがスライドするかがわかった。
しかしこれは基本設定値のようなもの。
実際にインダクトローターがスライドするかは
・バネの強さ
・スプールの回転数(遠心力)
・ブレーキダイヤル設定
・インダクトローターのサイズ(主に厚み)
によって変わる。
あくまで感覚的な話で数値は適当だが、例えばスプールが6000回転/minの場合、ブレーキ0(弱)ではインダクトローターはスライドしないが、ブレーキ20(強)だとスライドしてブレーキが強くかかる。
かなり簡略化しすぎの方程式だが
回転数 x ブレーキダイヤル
が、ある一定値(バネの強さ)を越えるとインダクトローターがスライドすると考えても問題ない。
低回転でもブレーキダイヤル設定が強ければインダクトローターはスライドし、ブレーキを掛ける。
そのためピッチングのようなスプールが低回転の投法でもSVブレーキシステムは有効。
バネの強さ、スプールの回転速度、ブレーキダイヤル設定のミックスでインダクトローターがスライドするか決まる。
上記で調べたバネの強さは、あくまでもスライドするための基本値となる。
画像はダイワのサイトから。
SVブーストに話を戻す。
SVと同じブレーキダイヤル設定(SVでバックラッシュしないギリギリ設定)では、SVブーストはバックラッシュする。
使用感として、初期バックラッシュを防ぐ強いバネが戻った瞬間、SVよりスプールが高回転し、ラインが一気に浮く。
感覚としてはSVブーストの強いバネが戻った直後のブレーキ力は、SVと比べると50~75%くらいの抵抗値だと思われる。

数値的な裏取りをしてみよう。
各ブレーキシステムのインダクトローター関連を計測した。
厚み | ゼロ値 | B開始値 | MAX値 | 実質値 | |
SV | 0.7mm | 0.9mm | 2.5mm | 2.9~4.5mm | |
SVB | 0.6mm | 0.4mm | 1.4mm | 2.4mm | 2.4~3.4mm |
マグZ | 1.1mm | 0.05mm | 2.75mm | 2.05~4.75mm | |
マグZB | 1.0mm | 0.37mm | 2.15mm | 3.35mm | 2.37~4.15mm |
インダクトローターの厚み。
数値が高いほど磁界の影響を受けるためブレーキが掛かりやすい。
ゼロ値
インダクトローターがスライドしていない時のデフォルト位置。
数値が高いほどブレーキが掛かりやすい。
主に着水直前にブレーキダイヤル設定の影響をどれだけ受けているかと考えて問題ない。
B開始値
ブーストスプールの強いバネに切り替わる時のインダクトローター位置。
数値が高いほどブレーキが掛かりやすい。
強いバネが戻った時とも言い換えられるので、ブーストスプールではこの数値が飛行中の実質的MAX値とも言える。
MAX値
インダクトローターのスライド最大時の位置。
数値が高いほどブレーキが掛かりやすい。
実質値
飛行中にインダクトローターがどれだけ磁界に入っているかの実質値。
リールによってネオジム磁石の位置に僅かな違いがあり、例えば17スティーズAでは1.9mm、21ジリオンでは2.0mm足した数値がインダクトローターが絶対に磁界を受けるデフォルト値となる(ここでは2.0mmで計算)。
例えばSVのインダクトローターが実際に受ける磁界影響は、2.9(0.9+2.0)~4.5(2.5+2.0)となる。
なおブーストスプールでは強いバネが戻ったあとの数値を最大値として記載。
上記の計測結果から、SVブーストは強いバネが戻った直後、インダクトローターは1.4mm+2.0mm=3.4mmの磁界影響を受ける。
一方SVは2.5mm+2.0mm=4.5mmの磁界影響を受ける。
感覚的にSVブーストの強いバネはキャスト直後に速攻戻るので、SVブーストの磁界影響は3.4mmからスタートと考えて問題ない。
これはSVと比べると75%ほど弱いブレーキとなるため、SVブーストではブレーキダイヤル設定を強くする必要があると理論的に証明出来る。
またインダクトローターの厚みもSVブーストは薄いため、上記の数値以上に磁界影響が低くなる。

かなり難解な説明なので噛み砕く。
画像は飛距離ではなく、キャストしてからの着水までのブレーキ抵抗のイメージグラフ。
SVブーストはキャスト直後はSVと同程度のブレーキがかかるが、ブーストスプールの強いバネは速攻戻り、SVより75%ほどしかブレーキ影響を受けなくなるためスプールが高回転する。
そのため、SVよりもブレーキダイヤル設定を1~2段強くする必要がある。
逆を言えば、SVはキャスト直後からMAXブレーキがかなり長時間掛かり続けるので、その分ブレーキダイヤル設定を弱く出来る。
なお画像のグラフは実際のキャスト時のインダクトロータースライド幅の数値からではない。
あくまで今回計測したデータと私がキャストした感覚から導き出したものであり、正確性には欠ける事を注意頂きたい。

実際に使い比べると、正直なところSVブーストはクセが強いと感じる。
上記のデータからもSVブーストの方がスプールが受けるブレーキ抵抗が弱いのは間違いなく、回転が軽いと実感出来る。
この軽さはチニングフリーリグで重たいシンカーを使ってぶん投げる場合、SVは素直にフルキャスト出来るが、SVブーストは強いバネが戻った直後のライン浮きが怖い。
これは私の想像だが、ダイワは「ブレーキダイヤル設定を強めにしても飛びますよ」を目指して作ったのではなかろうか。
上記のデータも合わせると、
「SVブーストはギリギリピーキーなブレーキダイヤル設定ではなく、強めに設定し、リールとブーストスプールに任せる」
が正解な感じがある。
ブレーキダイヤル設定が強めでも受ける磁界抵抗がSVより低いため、高回転で回ってくれる。
SVと比べるとブレーキダイヤル設定が強くする必要があるため、飛ばし屋としては納得しづらい部分ではあるが、ブレーキダイヤル設定を強くしても飛ぶというのは不思議な感覚だ。
SVブースト徹底解説はもうちょっと続くかも。続かないかも。続けたいかも。
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