3Dプリンタ製ルアーの積層方向

2023年02月28日 19:18


今年はトップでチニングしたい!
ということで、3Dプリンターを使ってチニング用トップルアーを作って見ることに。
まずはおなじみのFusion360でモデリング。
といっても、私はあまりトップのルアーを作った経験がなく、トップルアーの細かな違いが正直わかっていない。
今年5月に発売予定のダイワのラフトリックを参考に、80mmサイズでモデリング。





過去シーバス狙ってるとき、ミノーでキビレを何匹か釣っており、時期やタイミングでハードルアーでも釣果出せる事は確認済み。
ただチヌ系は噛む力が強く、私が普段作っているウッドルアーではボディに歯型がついてしまう。
使い続けると結構早い段階でボディが破壊される可能性が高い。
そんなわけで、今回はウッドボディよりもっと強度がある3Dプリンターでルアーを作る事に。





何度かの試作と内部構造の調整を行って、とりあえず形に。
ラトルが結構効くということで、かなりカチャカチャ鳴る仕様に。





ここからが今回の本題。
3Dプリンターでルアーを作る際、積層(出力)方向で違いがある。
私のルアーの作り方は2枚開きの鏡合わせでボディを接着するため、内部構造にこだわる事が出来る。
一般的な市販ルアーと同じ作り方。
ただFDM型(熱でフィラメントをにゅるにゅる溶かして盛っていくタイプ)の3Dプリンターでこの方式で作ろうとすると、積層方向によって色々違いが出てしまう。





まずボディ内側をプラットフォームの下に設定する場合。

メリット
 ・ボディ表面は比較的キレイ
 ・ボディの強度が高く割れ(折れ)づらい
 ・ラフトがなくても出力可能

デメリット
 ・ボディ内部にサポートが入るため精度が出しづらい(特にアイ)
 ・ボディ表面に等高線のような模様が出る


最大の難点はアイ周辺の精度が出しづらい事。
またボディ表面はキレイだが等高線のような模様が出てしまうので、これをヤスリでキレイに潰せるのはABSフィラメントのみ。
ただボディ表面の印刷自体は等高線の段々が出来てしまうものの、ノズルを押し付けられながら印刷されるためキレイではある。





次にボディ表面をプラットフォームの下に設定する場合。

メリット
 ・ボディ内部の精度が出る
 ・ボディの強度が高く割れ(折れ)づらい
 ・ボディ同士を接着する際、均等な力を加えて固定出来る

デメリット
 ・ボディ表面にサポート痕が残る
 ・ラフトやサポートが必須


比較的利点が大きいのが表面を下に設定する方法。
内部の精度が出やすく、強度もあり、ラフトやサポートの面が水平なのを利用し、ボディをあわせたときに均一な力を掛けながら接着固定が出来る。
ただルアー表面にサポート痕が残り、ボディ表面の多くの面積がオーバーハングで印刷されるためキレイに出力されづらい。
ボディ表面は一番汚く凸凹が出てしまうので、コーティング->ヤスリのループを何度か繰り返す必要がある。
コーティングや塗装を行うのであれば良い方法。





最後にルアーを立てて出力する場合。

メリット
 ・表面、内部共にある程度の精度や綺麗さがある

デメリット
 ・形状によっては出力出来ない
 ・ラフトやサポートが必須
 ・強度が低くなりがち(折れやすい)
 ・接着面のヤスリ掛けが必要
 ・内部構造を考える必要がある
 ・出力が安定しづらい


メリットはルアー表面が一番キレイに見えるため、そのままでも単色ルアーとして悪くない。
デメリットの多くは3Dプリンターをかなり理解していないと出力が困難。
3Dプリンターの特性を理解していれば良い結果が得られる。





例えば内部のオモリを固定するスペースや、フロントアイ、ラインアイ部分。
このまま印刷すると、完全なオーバーハングでダレてうまくいかない。
サポートを入れても良いのだが、使っている3DプリンターのAdventurer3では枝サポートはラフト必須でかなりめんどくさい。
ラインサポートだとボディ内部から生やす事になるので、後処理が面倒だったり、うまくいかない事も多い。





そこでオーバーハングする直前に坂道のようなリブを作る。
こうする完全なオーバーハングは避けられるため、サポートがなくても出力出来る。





次に印刷を安定させる方法。
FDM型の3Dプリンターで出力を安定させるには、オブジェクトはピラミッドのようにプラットフォームにくっつく面積が大きいのが理想。
この出力方式では、内部構造などにノズルが接触して、出力中にルアーが揺れてしまう事が多い。
揺れると印刷精度が下がるだけでなく、最悪プラットフォームから剥がれてしまい、印刷の失敗に繋がる。
印刷中にルアーが倒れないように結構大きなラフトを設定するのが一般的だが、土台面積が大きくてもルアーのように細長いとやはり揺れて失敗する事がある。
これを防ぐにはボディに枝サポートを作る事になるが、枝サポート自体が太くないと揺れを止められず、さらにサポート痕が残ってしまう。

そこで揺れを抑える壁をボディ内側に設置し一緒に印刷する。
この壁はボディとの隙間を0.1mm以下の設定で配置しており、わずかにくっついて印刷されるので、擬似的なラフトのように機能する。
また壁をボディ内側に作る事により、内側は接着面を整えるためヤスリを入れるのでサポート痕が残らない。





3Dプリンタルアーは接着固定すればすぐ投げられるように見えるのだが、現実はそうもいかない。
FDM型の印刷物はどんな単純な構造でも、密着されているように見えて微細な隙間が空いている事がかなり多い。
ルアーにピンホールが空いている場合、確実に浸水してしまう。
そのため防水処理のコーティングが必要となる。





ハンドメイドルアーでおなじみのセルロースセメントやウレタンでドブ漬け(ティッピング)するのが一般的。
私はセルロースセメントを使うのだが、セルロースセメントは溶剤効果があり、使用したフィラメントによっては色流れが起きる。
色流れするということは溶けてるということで、より強固な防水処理になるのだが、もう一手間掛けてさらに強固に出来る。

PLAやABSフィラメントはアクリル系接着剤で溶着する。
ようは溶ける。
なので最初にもっと粘度が低いアセトンにドブ漬けして、表面を軽く溶かして染み込ませる。
その後表面を整えるために軽くヤスリを入れて、再度アセトンにドブ漬け。
これで簡易防水が完成。
あとは保護として表面がツルツルになるまでセルロースセメントでのドブ漬けを繰り返す。
表面が整ったところで塗装に入っても良いし、テストや単色で良いならそのまま使う事も出来る。


CNC削り出しルアーに比べれば、3Dプリンタ製ルアーは作るのがとても簡単。
双方メリット・デメリットがあるが、自作したオリジナルのルアーで釣った最初の1匹というのは、自己満足の釣りの世界でもまた格別。
興味のある方は是非チャレンジしてみてください。



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