ネットを検索しても該当記事がほとんど出てこない領域に入ってまりましたこのシリーズ。
第3回はFusion360のCAMとCNC3020を使ったルアー切削について。
ほんとはもうちょっと長くなる感じだったんですが、切削は思わず見ちゃうすんげー動画が他にたくさんあるから適当でいいか。と端折りました。
今回もちょろっと補足します。
私が木材ルアー切削で主に使うエンドミルはこの4本。
全部中華製です。
特に1.5mmエンドミル(シャンク6mm、刃長5mm、一番左)と、3mmエンドミル(シャンク4mm、刃長8mm、右から2番目)がメインの2本です。
左から2番目は3mmエンドミル(シャンク3mm、刃長8mm)でシャンク径と刃径が同じなので、どうにもならない分厚い素材を切削するときに使います。
一番右は3mmエンドミル(シャンク4mm、刃長15mm)で、CNC3020だと刃が逃げやすいのでどうにもならないとき以外はなるべく使わない方向です。
その他にも1mmエンドミル、0.5mmエンドミル、1.5mmボール、0.5~3mmまでのショートドリルなんかも使います。
でも基本は1.5mm、3mmエンドミルの2本だけでなるべく完結させます。
綺麗に切削するためにボールエンドミル使う人が多いと思うんですが、木材だとそこまで精度が出るわけじゃないので私はほとんど使いません。
Fusion360のCAMの流れは
1.セットアップで切削対象モデル、原点、ワーク(ストック)を設定
2.各種切削設定
3.ポスト処理でNCコード(Gコード)出力
なんですが、私は本など買わずに完全独学でやっており、Fusion360のCAMでいくつか詰まった一つが工具設定。
卓上CNCで使うような工具なんてほとんど登録されていないので、自分が買ったエンドミルを登録する必要があります。
これを登録しない事には全くもってCAMが使い物になりません。
管理->工具ライブラリでライブラリを開き、右上の方の+マークついたエンドミルのアイコンをクリックすると新規登録出来ます。
実はこの辺のUI、Fusion360リリース当初と比べて今はかなりよくなっており、当初はマジ意味不明なくらいバグなんじゃないの?って動作が多くてやってられませんでした(;´∀`)
基本的には「刃物」タブで自分の使う工具の基本設定をするんですが、卓上CNCで使うようなエンドミルって、刃径とシャンク径が違い、テーパ形状になってるのが多いんですよね。
これの設定がこの「刃物」タブ内になく、これが設定出来ないと衝突判定が使い物にならない。
隣の「軸」タブがテーパ形状を設定するメニューなんです。
高さ:テーパの長さ
上側直径:シャンク径
下側直径:刃径
でテーパのエンドミルを設定出来ます。
次に詰まるのが各切削メニュー内の「高さ」タブ。
切削設定ごとに移動高さが加わったりするんですが、正直なところFusion360の高さ設定は現在もめちゃくちゃ分かりづらい。
実は私も思い通りの動作に持っていけない事があります。
バグじゃねーの?ってくらい、ほんとわかりづらいです。
移動高さ:一番最初と最後の移動時の高さ(だと思う)
退避高さ:次の切削に入るときに移動する高さ(だと思う)
トップ高さ:切削開始する面の高さ
ボトム高さ:切削終了する面の高さ
これらの何がわかりづらいかと言うと、例えばポケット加工時にZ軸1mm掘り進んだ後、そこから0.25mmエンドミルを持ち上げて、次のZ軸切削(2mmめ)にランプパスで入って欲しい。というのが、簡単には出来ません(;´Д`)
相対値0.25mm持ち上げて。とやりたいのに、退避高さまで上がってしまったり、Z軸が持ち上がらなかったり…。
Fusion360 CAMの悪い部分だと思うんですが、相対値と絶対値がものすごく分かりづらく、明示されていない。
CAMって独自性が高いアプリケーションだらけっぽいんですが、その中でもFusion360のココはUIの設計ミスと言いたい。
あとは卓上CNCを使う上で、Fusion360のCAMに罠パス設定がありまして、それが進入動作。
画像はちょっと見づらいですが、走査線の進入動作をスムーズに設定した切削パターンで、これをルアー内部の中空構造切削にやってしまうと切削時間が1時間くらい伸びます。
卓上クラスのCNCでは細かい制御点が設定された切削パスを指定すると、ステッピングモーターやコントロール基盤の性能的に送り速度が50~100mm/minくらいまで低下します。
ステッピングモーターが最大速度に達するまでのアクセル値というのがあり、レイテンシーというかタイムラグみたいなもので、最高速度に達する前に次の制御点命令が来てしまい、いつまで経っても最高速度(設定送り速度)になりません。
進入動作を直線などにすると早いです。
ただラフ切削が荒く、アルミなど重たい切削をする場合はスムーズに設定する必要などもあります。
進入動作のスムーズが悪というわけではなく、卓上CNCだと結構時間かかるよー。という理解が重要です。
外周切削時にエンドミルの上げ下げによる切削痕を残したくない場合、半円の進入退出動作とか入れる必要なんかもありますしね。
CAMに慣れていないと分かりづらいのが公差と円滑化。
公差の値が0.1mmより上だとかなり適当な切削パスが作られ、モデルにめり込む事が多々あります。
0.025mmくらいでかなり精度が高い切削パスが作られますが、3D切削時に解析が悪く、削って欲しいのに切削パスが作られない事などもあります。
0.01mm以下にすると切削パスが作られるまでの計算時間がかなり増えますが、モデルによっては結構ギリギリまで切削パスが作られます。
ただしこれも上記同様に制御点が増えるため、卓上CNCクラスでは実際の切削時間が増える事があります。
そこで円滑化をかけて制御点を減らします。
Fusion360のデフォルトでは公差の1/10の値が円滑化に入りますが、これだとあまり効果的な円滑化がかかりません。
同じくらいの数値にすると円滑化の意味が大きくなりますが、精度は落ちるかも。
最後にもう一つ補足で、Fusion360 CAMのパターンについて。
この動画ではパターンは移動しか使っていませんが「パターンをミラー」を使う手もあります。
これだと動画内の「02:配置」でミラーしている項目がほぼズバッとなくす事が出来るんですが、Fusion360 CAMのパターンをミラーには仕様上のどうにもならない問題があります。
CAM切削パスをミラーで反転させると、横方向の補正(切削方向)のダウンカット、アップカットが反転されます。
なのでパターンをミラーで作った切削パスは、厳密にはパターン元と違う切削結果になります。
これを嫌ってソリッド側でミラーして、パターンでは移動のみ行っています。
またFusion360 CAMのパターンは多段で重ねると(ミラー->移動みたいな)、工具順が継承されないため、パターンごとに分ける必要があったりします。
この辺も含めてミラーはソリッド側でやった方が良いと思います。
使いまくるとFusion360のCAMは結構びみょーなところが多かったりしますが、それでも十分使えるレベルです。
Fusion360 CAMとCNCのクセを理解すれば、だいたい削れると思います。
何より統合環境なので、モデルを変更したらCAM切削パスをほぼ一発で作り直してくれるのはめちゃくちゃ頼もしいです。
現物合わせで追い込んで精度出すときなどは、ほんとに重宝します。
さて、次回の第4回はルアーの組み付けと独自重心移動システムについてなど。
次回の更新はちょっと時間空きます。
セルロースセメントとかのドブ漬けに時間がかかるんだ…。